公開日 2022年03月14日
中近世ヨーロッパ史のフロンティア / 高田京比子 [ほか] 編
(渋谷聡先生ほか執筆)
目次
第I部 地域のネットワークとコミュニケーション
第1章 中世後期ドイツの政治的コミュニケーションと秩序
――権力表象と同盟・ネットワーク(服部良久)
1 中世後期ドイツと政治的コミュニケーション
2 カール四世の政治的プレゼンス――シンボルと宗教的自己表象
3 「アソシエイティヴな政治文化」と中世後期の国制
4 中世後期のコミュニケーション、アソシエイション、国制
第2章 スティーヴン王期のチェスター伯と北部ウェールズ
――境界をまたぐネットワーク形成(中村敦子)
1 スティーヴン王治世の内乱期
2 ウェールズ境界地方をめぐる問題点
3 レナルフ二世とウェールズ境界地方
4 ウェールズ境界地域にみられる貴族間ネットワーク
第3章 中世盛期スコットランドにおける教皇特任裁判官による紛争解決
――人的交流の観点から(西岡健司)
1 人的交流を生む紛争解決
2 教皇の「特別なる娘」
3 訴状を口ーマヘ
4 裁きを担うのは誰か
5 合意できる解決策を求めて
6 紛争解決の積み重ねの先に
第4章 一三世紀半ば北イタリアにおける河川交通と紛争
――ヴェネツィアとクレモナの協約を中心に(高田京比子)
1 北中部イタリアの河川交通
2 ヴェネツィアとクレモナの協約(1258年9月)
3 1258年頃の政治状況――対エッツェリーノ戦争
4 ヴェネツィアとフェッラーラの協約(1258年1月)
5 対エッツェリーノ戦争の帰結
第5章 現下の悪だくみ、それはハプスブルクか
――1291年のスイス中央山岳地域(田中俊之)
1 スイス人にとってハプスブルクとは何か
2 永久同盟文書から何を読み取るのか
3 ハプスブルクは敵か
4 ミラノそしてウルゼレン
5 脱伝統的歴史観
第6章 ネットワーク上の学識者たち
――ヴォルムス帝国議会とその周辺(中田恵理子)
1 一五世紀のドイツにおける大学と学識者
2 「ここ百年で最大の帝国議会」――諸侯とその随員たち
3 交渉は会議室の外で――都市を代表する人々
4 ヴォルムスの政治家たち、その学歴と人脈
5 大学を結節点とした人文主義者のネットワーク
第7章 近世ドイツ帝国最高法院における法曹のネットワーク形成
――一八世紀末の事例から(渋谷聡)
1 公論の場としての帝国最高法院
2 陪席判事推挙制度の枠組み
3 陪席判事推挙の構造
4 陪席判事のネットワーク形成――父、同僚、息子
第II部 統治のダイナミクスと政治文化
第8章 異端者の情報にアクセスする
――中世南フランスにおける異端審問記録の作成・保管・利用(図師宣忠)
1 異端審問官によるテクストの扱い
2 中世異端へのアプローチ
3 カタリ派の拡大と異端審問の展開
4 異端審問の史料類型
5 審問記録の作成・保管・利用をめぐって
6 テクストと現実との関係を考えるために
第9章 救霊から共通善へ
――カペー朝後期の地方監察(轟木広太郎)
1 カペー朝後期の地方監察
2 ルイ九世の地方監察
3 フィリップ四世期の地方監察――国王監察使ユーグ・ド・ラ・セルを中心に
4 共通善と国王の正義
第10章 聖人に囲まれた国王
――ルクセンブルク朝カレル四世と聖十字架礼拝堂の聖人画群(藤井真生)
1 中世君主と聖人の結ぴつき
2 チェコにおける聖人崇敬の浸透
3 カレル四世の聖人崇敬
4 聖十字架礼拝堂の聖人たち
第11章 「暴君」リナルド・ダ・モンテヴェルデとフェルモの反乱
――八聖人戦争期の移動する傭兵隊長(佐藤公美)
1 ローカル・リージョナル・インターリージョナル――三つのスケールをつなぐ反乱
2 八聖人戦争と反乱の研究
3 傭兵リナルド・ダ・モンテヴェルデとフェルモの反乱
4 反乱と移動する傭兵隊長――地域を超えたスケールの接合
5 一四世紀という時代――移動と空間スケールの接合
第12章 都市反乱と暴力の諸形態
――一五世紀後半リエージュの内紛を手がかりに(青谷秀紀)
1 コミュニケーション・メディアとしての暴力――内紛の都市政治を読みとく
2 リエージュ紛争――都市の政治集団と対立軸
3 処刑の論理――都市権威と合法的暴力
4 ラース・ド・リントレと枢密顧問会――半周縁者たちと非合法的暴力
5 子どもたちの反乱――非政治的存在と脱法的暴力
6 緑の天幕団――アウトローとゲリラ戦
7 法と制度の参照――コミュニケーションの構造を支えるもの
第13章 一六世紀トスカーナにおけるビガッロ委員会の設立
――コジモ一世の救貧政策とその背景(坂上政美)
1 救貧史の中のビガッロ委員会
2 ビガッロ委員会の救貧政策
3 ビガッロ委員会による改革の特徴
4 ビガッロ委員会設立の政治的背景
5 ビガッロ委員会の活動の特徴とその背景
第III部 アイデンティティの形成と多様性
第14章 「見えなくなっている」人々を求めて
――七~八世紀のビザンツ帝国の有力者(小林 功)
1 「苦難の時代」の見直しのために
2 七~八世紀の状況
3 古代末期の有力者
4 生き残るための変化
5 地方に残る有力者
6 皇帝を支える人々
第15章 最果ての島の貴族
――一三世紀アイスランドにおける階層分化(松本 涼)
1 中世アイスランドの社会像をめぐって
2 ストゥルルング時代の階層分化
3 王権受容後のアイスランド人貴族
4 何が貴族を作るのか
第16章 「ギリシア人たちの嘆願」から見る「モレア人」の形成
――一三世紀ラテンギリシアの社会構造(櫻井康人)
1 ラテン・ギリシアの誕生
2 アカイア侯国史の研究動向と問題の所在
3 「ギリシア人たちの嘆願」
4 『モレア年代記』の再検討(1)――ペロポネソス半島占領まで
5 『アシズ・ド・ロマニ』の再検討
6 『モレア年代記』の再検討(2)――「ギリシア人たちの嘆願」の提出まで
7 「ギリシア人たちの嘆願」への対応
8 非「モレア人」による「モレア人」への揺さ振り
第17章 ガレー船が戻ってくるまでに
――一四世紀中葉、コンスタンティノープルのヴェネツィア人共同体(高田良太)
1 ビザンツ帝国とヴェネツィア
2 先行研究と史料
3 記録か作成された場所と時間、関わる人々
4 共同体内部の人々の活動
5 バイロの権能の限界
6 共同体を越えて
第18章 一五世紀ビザンツ知識人の「西方」との出会いと別れ
――ゲオルギオス・スホラリオスの教会合同問題への関与を例に(上柿智生)
1 揺れ動き多様化するアイデンティティの中での他者との出会い
2 フェッラーラ・フィレンツェ公会議におけるスホラリオス
3 スホラリオスの聖霊発出に関する著作の分析
4 「西方」との出会いがもたらしたもの
第19章 ギャロッピングガールズ
――一七世紀前期における英国女子修道会とイエズス会との関係をめぐって(櫻井美幸)
1 英国女子修道会の四〇〇年――メアリー・ウォードの名誉回復
2 メアリー・ウォードと英国女子修道会の設立
3 英国女子修道会は容認できるか?――二人のイエズス会士の見解
4 英国女子修道会を支援したイエズス会士たち
5 英国女子修道会の敵たち
貴重な資料をありがとうございました。